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2011年 10月 05日
鷺沢萠(さぎさわめぐむ)が亡くなったのは2004年のことだった。
プロフィールを見ると私と同い年だから、35歳で自らこの世を去ったことになる。 35歳くらいの私は、二人の子育てに追われて忙しい時期であったし、その数年前には会社の同僚と子どもの保育園でよく顔を合わせたお母さんと近所の奥さんが、病気や事故で亡くなっていたことも重なって、35歳という年齢で自ら死を選ぶというのが全然ピンとこなかった。いや寧ろ、憤りを感じるほどのことであったのだが、それでも「なぜ死んでしまったのだろう?」という疑問は残り、いつかは鷺沢萠の小説を読んでみようと思ってはいた。 そして、またしても行きつけの古本屋にて彼女の小説と出合うこととなった。 パラパラと文庫をめくると、想像していたのよりずっと堅い文体であった。裏表紙のあらすじに”ラブストーリー”とあるからには、もっとフワフワした文章を想像していたのだ。 何冊かあったうちの2冊を買って、最初に読んだのがこの「過ぐる川、烟る橋」だ。 もう一冊の解説に”「過ぐる川、烟る橋」を読まれたい”と書いてあったからだ。 中学卒業後に上京し、人気プロレスラーを引退してスポーツキャスターになった主人公が、過去の思い出を引きずりながら郷里に近い博多の夜の街を訪れ、過去の自分と向き合う。 この本のあらすじは、これほどまでに簡単に書けてしまうものだ。 主人公が博多にいた数時間のうちのほんの2-3時間の出来事を、主人公の過去の出来事を織り交ぜながら立派な長編に仕上げられている。 この文庫の解説にあるように、”研ぎ澄まされた”文章なのである。 ストーリーは、よくある設定のものであるにもかかわらず、数行読みはじめるや一気に物語の世界に引き込まれた。脇田や波多江が実在しているかのように、私の頭の中で動き出す。 この感覚は、宮本輝の小説を読んだときの感じによく似ていると思う。 とりわけ難しい表現が並ぶわけでもなく、単語自体は平易なものばかりなのに、文章から与えられるイメージは強烈なのだ。私は、こういうものが書ける人こそが本物の小説家であると思う。 最近の流行作家は、作品は面白いし、構成もよく練りこまれていると思うのだが、”文章がうまい”と思う作家は意外と少ない。国語力に乏しいと思わせる作家が少なくないのである。 そういう意味でも、鷺沢萠は類まれなる才能を持った作家だったのだと思う。 生きていれば私と同じ43歳だっただろう。 この作品を読んでも、何故彼女が死ぬことにしたのかは全くわからなかったが、 これから彼女の作品をたくさん読みたいと思った。
by phriky
| 2011-10-05 13:37
| 本
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